「マケドニア」ではダメなの？北マケドニアと改名した理由とは

「北マケドニア」という国名を聞いたことがありますか？かつては「マケドニア」として知られていたこの国は、2019年に正式に国名を変更しました。

国名を変更するというのは、単なる表記の問題ではなく、大きな政治的・歴史的な意味を持ちます。特に、北マケドニアの場合はギリシャとの関係が深く影響しています。実際に、国名をめぐる論争は何十年にもわたって続き、最終的には国際的な合意のもとで「北マケドニア」と名乗ることになりました。

では、なぜギリシャは「マケドニア」という国名に反対したのでしょうか？そして、国名変更によって何が変わったのでしょうか？その背景を詳しく見ていきましょう。

マケドニアとギリシャの対立の歴史
国名変更の背景と議論
国名変更の決定とその影響
まとめと今後の展望

マケドニアとギリシャの対立の歴史

北マケドニアの国名問題を理解するには、まずマケドニアという地域の歴史を知る必要があります。

古代マケドニア王国とアレクサンドロス大王
古代マケドニアは、紀元前4世紀にアレクサンドロス大王によって強大な帝国を築いたことで知られています。このため、ギリシャ人の多くは「マケドニア」という名称をギリシャ文化の一部と考えています。

近代のマケドニア地域と国家独立
19世紀から20世紀にかけて、マケドニア地域はオスマン帝国の支配を受け、バルカン戦争や第一次世界大戦を経て、現在のギリシャ、北マケドニア、ブルガリアに分割されました。1991年にユーゴスラビアから独立した「マケドニア共和国」が誕生しましたが、ギリシャはこれに強く反発しました。

国名変更の背景と議論

マケドニア共和国が1991年に独立した直後から、ギリシャは「マケドニア」という国名に強く反発しました。その理由は大きく分けて以下の3つです。

1. ギリシャ領マケドニアとの混同を防ぐため
ギリシャ国内には「マケドニア」という地名を持つ地域（ギリシャ領マケドニア）が存在します。ギリシャ政府は、隣国が「マケドニア」という名称を使用すると、あたかもその地域まで自国領であるかのような誤解を招くと主張しました。

2. 文化的・歴史的な遺産の独占を防ぐため
ギリシャ側は、アレクサンドロス大王をはじめとする古代マケドニアの遺産はギリシャ文化の一部であり、新しく独立した国が「マケドニア」を名乗ることで、ギリシャの歴史的遺産を奪おうとしていると考えました。

3. NATO・EU加盟交渉への影響
ギリシャはNATOやEUの加盟国であるため、「マケドニア共和国」の国際的な承認に対して拒否権を行使することが可能でした。実際に、マケドニア共和国は国際舞台で「旧ユーゴスラビア共和国マケドニア（FYROM）」という仮称を使用せざるを得ませんでした。

この問題を解決するために、長年にわたって国際交渉が行われましたが、国名変更に関して国内では賛否が分かれ、大きな政治的課題となりました。

国名変更の決定とその影響

長年の対立を経て、2018年に「プレスパ合意」が締結されました。これは、マケドニア共和国が「北マケドニア共和国」に改名することを正式に認める合意です。

2018年のプレスパ合意と国民投票
プレスパ合意は、当時のマケドニア首相ゾラン・ザエフとギリシャのアレクシス・ツィプラス首相によって結ばれました。この合意を受けて、2018年9月に国民投票が実施され、改名に賛成する票が多数を占めましたが、投票率が低く、最終的には議会の承認を経て決定されました。

2019年の正式改名とその後の変化
2019年1月、マケドニア共和国は正式に「北マケドニア共和国」へと改名されました。この結果、ギリシャは北マケドニアのNATO加盟を支持し、2019年3月には正式にNATO加盟が実現しました。

EU加盟交渉の進展と課題
国名変更によってギリシャとの対立は一定の解決を見ましたが、北マケドニアのEU加盟交渉は依然として難航しています。特に、ブルガリアが言語や歴史認識の問題で交渉を妨げており、新たな外交課題が浮上しています。